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Amazonレビュー
2010/03/07
「悲しい優しさ。」
物語の世界観としては、ファンタジーではなく、現代です。
でも、最終的にはSFでした。
話の流れとしては、結構寂しい物語ですが、フランケンシュタインの優しさで締めくくられています。
でも、悲しい優しさの形でした。
フランケンが出てきますが、物語は完全にオリジナルです。
ただ、ちょっとグロがあるので、その辺は好みかもしれません。
でも、とても良い話ではあります。
人間にとっても、最終的に誰かと一緒に居たいという思いは、そういうことなのでしょう。
2009/06/27
「なんて愛しい存在」
解剖のシーンからこの物語は始まる。一人の男がつぎはぎの少女を丁寧に解剖していき、異変に気付く。
解剖されている少女が話し始めた
心臓を取り出されても、当たり前のように話すその少女は自分のこれまでを語りだす。
まずは少女が“生まれた”1999年の出来事から。
その頃、密かに病が広がっていた。体の一部が腐り、未知の細胞に置き換わる奇妙な病を研究する場所で彼女は目覚め――
最初はつぎはぎの少女、ビスケ(ビスケット)以外のキャラの視点寄りで物語りは進み、やがていつの間にかビスケの視点寄りで描かれていく。読んでいる側はそれに伴ない、異形の存在ビスケがどんな思考で行動しているのか理解し、そして彼女の行く末がどういったものなのか見届けたくなります。文庫本1冊なのに内容はとても濃いので、読み終わった後思わず深呼吸してしまいました。
日日日さんの最近の作品の中では異色の内容。ジャンル、帯にはダークファンタジーとありますが、なんか違う気がします。
日常会話ではなかなか聞くこと無い専門的な言葉などが多く出てきます。参考書籍も多く、この物語を生み出すのにどれだけのものをつぎ込まれたのか伺えます。ただ、それ故に入りづらいと感じる人、題材が題材なので合わない人が多いかと。最初の解剖シーン、駄目な人は駄目かもしれません。
2009/05/31
「ビスケットのように甘くほろ苦く」
ビスケット・フランケンシュタイン。
通称ビスケ。
彼女は人ではない。
人に似て非なるまったく別個の存在であり、遺伝子の進化の亜種にして究極。
死体を継ぎはぎし誕生したビスケは研究室を脱走し、様々な歪みを抱えた人々との出会いと別れ、様々な体験を経て一個の人格を持ちえる存在となる。
体に重大な秘密を抱え、生まれて初めての恋に身を焦がす大学生・古月蝶。
最愛の母の教えを遵守しひとごろしを続ける少女・小宮山楽園。
醜く無能な現実の自分を捨て、仮想現実に逃避する南雷多。
自分のもととなった十数人の少女たちの記憶を持ち得、対象を捕食する事によってその人物の知識を保存する永遠の少女・ビスケは、進化的限界に達した人間の醜さや歪みを半世紀の間見続けながら、とある目的を胸に秘め、世界中を旅して患者たちと接触する。
遺伝子工学はじめ情報処理学に大脳生理学など、専門用語がところどころ織り込まれた奇病と進化の考察は難解でとっつきにくいが、虚構の枠をこえ現実の問題についても示唆するリアルな観点を孕んで興味深い。
などと難しいことをならべたが、絶対的な孤独を背負った世界に唯一の存在の美少女が、愛を求めてさすらうハートウォーミングロードノベルとしても読みごたえあり……
というのはちょっと(かなり)嘘で、日日日の作品群の中では「蟲と眼球とテディベア」に一番近い滅びの絶望と隣り合わせのダークでシニカルな世界観とタナトスでペーソスな空気が全編を覆います。
難しいことをごちゃごちゃならべたんで引いちゃう人もいるかもなんですが、とりあえず最初の話だけでもぱらぱら読んでみてほしい。
日日日の描くキャラは皆どこかサイコパス的な歪みを抱えていて、自分の欲望と目的のためなら殺人行為すら辞さないんですが、そんな良くも悪くも自己中なキャラが特定の人物にだけ捧ぐ無償の愛情や執着にジーンときちゃうんですよね……不覚にも。
蝶、楽園、雷多。
彼らの物語が不条理に断ち切れ終わってしまっても、ビスケの物語は続く。永遠に。
ビスケは自らに彼らを語り継ぐ義務を課す。
字義通り、遺伝子レベルで。細胞単位で。
何故なら彼女にはそれが可能だから。
彼女にしかできないことだから。
果たしてビスケの目的とは?
人類の未来は?
滅びの奇病の正体は?
継ぎはぎの怪物として生まれ、人に似た心を持つ一人の少女の数奇な運命の終着点を、ぜひとも確かめてください。
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